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数学と機械学習コミュニティを運営する開発会社が考える現在と未来の開発のあり方 2/3

 
機械学習コミュニティの立ち上げ
機械学習コミュニティに積極的に関わるようになったのは、私が現在の会社を起業して、しばらくしてからでした。2015年の暮れぐらいに尼崎の税理士事務所の方や関西学院大学の先生らが中心となって組織されている「ソレイユデータ道場」というデータ分析をビジネスの現場で活かしていくために立ち上げられたコミュニティの会合で、私の前職で経験したデータ分析ビジネスについて、どのような戦略で成長させていったかを話したことがきっかけです。その話の最後の方で、私が当時発表されたばかりのGoogleが開発したオープンソースの深層学習フレームワークTensorFlow(*6)について話をしました。TensorFlowは深層学習を研究領域から産業応用にシフトさせていく可能性があり、私としては積極的に産業応用について検討していきたいと話を興奮気味にお話をさせていただいたと記憶しています。その後、しばらくして運営の方から、TensorFlowにフォーカスした機械学習コミュニティを立ち上げたいので、ぜひ運営を手伝って欲しいと言われたことが、コミュニティの運営をはじめるきっかけとなりました。
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(写真 ゆるキャラ生成のプロセス)
2017年に入り、機械学習の0SSフレームワークであるTensorFlowが普及していくとともに、私の会社であるスクラムサインもコミュニティのつながりから機械学習モデリングの開発のご相談が徐々に増えてきました。
 
Math & Codingでの学びのスタイル
2017年の夏に数学と機械学習を学ぶコミュニティとしてMath & Codingという勉強会コミュニティを立ち上げました。
理論と実践をバランスよく学ぶことをねらいとしました。当時、主催していた勉強会を通じて知り合った理化学研究所に勤めるメンバーに依頼し、ゲリラ豪雨の予測などで使われているデータ同化(*9)のことを話してもらうイベントを企画してスタートしました。
しばらくしてメンバーの方から基礎的な数学の授業をしてほしいという要望がでてきまして、数学の線形代数と微分積分学の講座をスタートしました。勉強会で知り合った方が企画と運営を行い、授業形式で進めていきました。開始当初は参加者も喜び、上手くいったかに見えましたが、講師役をお願いしたメンバーが、ある参加者と内容や進め方について意見が食い違い口論になり、途中でやめてしまうことがありました。
始めたはよいものの、中途半端な状態で宙に浮いた形になり、私は会としてどうするかかなり悩みましたが、状況を説明した上で一人でも参加される方がいらっしゃれば開催することにしました。ほとんどの方が講師がいないので、キャンセルされました。
結果的に私を含め参加者は3名でした。おそるおそる教科書を一緒に読み進め、疑問に思うところを、ホワイトボードに書きだして議論を進めていきます。次第に、今までにない白熱した議論になっていきました。そのとき、狭い貸し会議室だったのですが、暗闇の中に光が差し込んだ感覚だったのを覚えています。3人で終わった後に振り返り、継続していくことを確認すると、キャンセルしたメンバーに呼びかけて、同じ要領でやってみたところ、。最初は北村がそこまでいうからと半信半疑で集まったメンバーが次第に熱をおび、前回同様に盛り上がりました。例えばこのようなやりとりです。誰かが定理の証明で、その場で感じた素朴な疑問を問いかけます。それに対してメンバーが反応して「私もよくわからないのですが、こう思うのですが、どうでしょう?」などといったやり取りをしました。3人で行った時のように白熱した議論になり理解が深まりました。なるほど、グループで対話をして学びあうって、こういうことだったのかと実感した瞬間でした。
私たちの学ぶスタイルが、先生役をあえて立てず、「問い」を手掛かりに皆で話し合い理解を深めていく現在のスタイルが定まったのは、この出来事がきっかけでした。
しかしながら、良いことづくめではなく欠点も当然あります。理解しあいながら進めていくことを大切にすることと引き換えに、一冊の本を読み終えるまで非常に長くなってしまいます。例えば数学の基礎である「集合と位相」は約三年間かけて読みましたし、通称PRMLと呼ばれる「パターン認識と機械学習」では、二年半の時間をかけました。
すばやく、知識を手にいれることには圧倒的に向いていないです。
しかしながら、一つの数式をめぐって様々な角度から議論し、理解が深まった時は非常に充実感があります。参加者の中には、感想として数式が生き物に見えてきたとおっしゃる方もいました。ときに後から考えると間違った結論を出してしまうこともありますが、メンバーから多様な意見が出てくるので、それぞれの見方で俯瞰することができ、物事の本質に近づいていく感じがします。またその中で現場で理論や知識を応用していく知恵が得られるのではないかという当初抱いていた仮説は確信に近いものに変わっていきました。
2022年現在は「群論」(*10)と「ベイズ深層学習」(*11)の勉強会を開催しています。
三年以上に渡り年間60回程度のペースで勉強会を開催し、今では1200名以上のメンバー登録数がある勉強会に成長しています。
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(写真 Math & Coding 勉強会 風景)
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回は、いままでコミュニティ運営をしてきて大切にしている3つのポイントと、私たちは技術コミュニティを中心価値においた経営を行なっているのですが、DXのようなトレンドとなるテーマを通じてその可能性を探っていきたいとおもいます。
 
 
(*6)TensorFlow
Googleが開発しオープンソースで公開している、機械学習に用いるためのソフトウェアライブラリ
(*7)RNN(回帰型ニューラルネットワーク)
wikipedia
(*8)GAN( 敵対的生成ネットワーク)
原論文
(*9)データ同化
wikipedia
気象庁
(*10)群論
wikipedia
参考文献
(*11)ベイズ深層学習
参考文献
(*12)グループプロセス
参考文献
 
 
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